おはようございます、beataです。
ところで、経営者として日々大きな決断を下す中で、こんな感覚を覚えたことはないでしょうか。
「新しいプロジェクトを始めようとしても、組織が重くてなかなか一歩が踏み出せない」
「メンバーの意識を変えたいのに、どこか空回りしてしまう」
変化を起こそうとすればするほど、見えない壁に押し戻されるような感覚です。
今日は、その〝重さ〟の正体と、静かに組織を動かす視点について、一緒に深めていきましょう。
ある興味深い実験の話があります。
とある研究者が、ホテルの清掃スタッフを対象に行なった研究です。
彼女たちは日々、部屋の掃除やベッドメイキングで大変な運動量をこなしていました。
しかし、彼女たちの多くは「自分は普段、まったく運動をしていない」と思い込んでいたのです。
そこで研究者は、彼女たちを二つのグループに分けました。
どちらのグループにも「運動が身体にもたらすメリット」を伝えたのですが、
片方のグループにだけ、こう付け加えたのです。
『あなたがたが日々行っている仕事は、すでに十分な運動量になっているのですよ』と。
一ヶ月後、彼女たちの体に思いがけない変化が現れました。
自分の仕事が運動だと知らされたグループだけが、平均して一キロほど体重が落ちていたのです。
もう一方のグループには、何の変化もありませんでした。
なぜ、このような違いが生まれたのでしょうか。
人の心と身体には、現在の状態を保とうとする強い性質があります。
変化を恐れ、現状を維持しようとするのは、生き物としてごく自然な機能なのです。
だからこそ「まったく新しいこと」をゼロから始めようとすると、強い抵抗が生まれます。
人は「さあ、これから始めよう」と決意するよりも、
「実は、もうすでに始まっていたのだ」と気づくほうが、遥かに自然に前へ進めるのです。
清掃スタッフの彼女たちは、知識を得たことで、無意識のうちに自分の動作を愛おしむようになりました。
階段を使う一歩、掃除機を引く一腕に、ほんの少しの意識と誇りが宿ったのです。
経営も、まったく同じではないでしょうか。
組織を変革しようとするとき、私たちはつい「これから何を足すべきか」「何を開始すべきか」ばかりに目を向けてしまいます。
しかし、まだ何もない真っ白なキャンバスを目の前にすると、人は足がすくんでしまうものです。
本当に必要なのは、まったく新しい何かを強制することではなく、
これまで歩んできた道のりの中に、すでに芽生えている『小さな成功の種』を照らし出すことです。
「私たちは、すでにここまで歩んできていたんだ」
その事実に気づいたとき、停滞していた空気は静かに動き始めます。
問題に見えていた停滞は、実はメンバーが次の足場を探している静寂の時間にすぎないのかもしれません。
情報を与えて説得するのではなく、相手がすでに持っている価値に光を当てること。
経営者とは、新しく道を作る人であると同時に、
「すでにそこにある道」をそっと指し示す人なのかもしれません。
明日、オフィスに入ったら、
新しく始めたいことの計画書を開く前に、
チームがこれまでに積み重ねてきた小さな営みを、ひとつだけ探してみてください。
「ここまで、もう進んでいたんだね」と、心の中で、あるいは言葉で温かく伝えるだけで十分です。
その小さな手応えが、大きな変化を引き寄せる確かな一歩になります。
風は、いつも静かに吹き始めます。


コメント